『まじでクソ』
『完全にネタ』
彼女は『マジでこれどがん思う?』を30秒に1回ペースで挟みながら彼氏のグチを畳み掛けた。
正確にいうと『彼氏だった』が正解で、壮絶な職場の不倫関係の末バッサリいかれたそうな。
なんぞ修羅場も経験したそうで、飛び出すエピソードのひとつひとつが重い。とにかく重い。
それでもそのお相手のおっさんの写メを見せたり、『クソ』とかいいつつ楽しそうに話す姿をみて『この乙女心ってやつ、わっかんねぇな』って思った。
これは『腹いせにゲロりたい』と連絡があってランタンフェスティバルにかり出された9年前のお話。
せっかくランタンにきたけんなんか食おうでと、湊公園近くで肉まんや角煮まん、マーラーカオとか色々買った。
『おごれさ』
拒否する理由も空気もなかった。
彼女は角煮まんを嬉しそうに頬張った。
『肉まんもらうで』
『どうぞどうぞ。角煮まんあればいい。』
私は肉まんも好きでね。角煮まんはまぁヒーローだけど、こいつの肉汁のうまさは安定だ。めっちゃうまい。飲茶になくてはならん存在だろ。この子まるでわかってねぇな。ラッキーだぜ。うっしっし。
22時をまわると人もまばらになってくる。それでも湊公園で私たち2人はなにするでもなく彷徨っていた。
私は『もう帰ろうで』って言うタイミングを見計らっていた。
『待ってたっさね〜ここでさ〜』
あいかわらず笑って話す彼女。ただこの言葉だけは違っていた。
『いつ誰が見てるかわからんのにさ、めっちゃ人いるのにさ、手繋いでくれたんよね』
私は何も言い返しきれず、缶ビールを飲むふりをして言葉を探すけど何も見当たらなかった。
『もう帰ろうで』は涙ぐんだ彼女にさらわれた。
中華街の入り口から築町電停までの300mほどのストレートを歩く。
そして『見納め』って言って橋からランタンを2人で眺めた。
ーおいじゃだめかねー
その言葉は口に出さず缶ビールで流し込んだ。
握りしめた体温でぬるくなっていた。
もう巻き戻せないその3分間ほどの静寂は
彼女の『今日はありがと』という言葉と共に赤迫行きの電車に乗って消えていった
***
『長崎の中華街こんな小さかったっけ』
あれから9年。横浜から親戚がやってきた。この前会った時はまだ田舎の女子高生だったのに
方言も抜けて大学1年生になった彼女はすっかり都会めいていた。
ランタンフェスティバルを案内する。今年は人が多い。
『2個も3個も!そがん角煮まんばっか買わんでマーラーカオとかハトシとかも買ったらどがんね?』
私の問いかけに彼女はにっこり笑って元気よく言った。
『角煮まんじゃなきゃダメなんだ』
9年前のあの日、口から言葉が飛び出しても答えはきっと同じだった。
わかっていたから言えなかったんだ。
それは9年越しのアンサーに聞こえた。
角煮まんを頬張りながら歩くアラサーに2月の風はこたえる。
それでもそんな中食べる角煮まんは格別だ。
うめぇなぁ。角煮まん。やっぱかなわねぇや。
『ダメなんだ〜、か。』
3月。春が近づいていた。
少し笑って少し泣いた。
少しでっ…!!おさまるかっ…!!
ボロ…ボロ…
モテたいっ…!!
がっ、ダメっ…!!!
無いっ…!!!
取り柄っ…!!!
ちくしょう。朝起きたらイケメンになってねぇかねぇ。
よくわからんのんすけど、なんかもうブログ書いてくしかねぇなって思いました。
ではでは今日はこのへんで。猫町でした!