瓶ビールが嫌い【赤提灯下の出来事1】

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『人生で大切なことは全てマンガから学んだ』

ネットサーフィンしていた時、ふとそんな言葉をみかけたんす。

俺はどうだろう。マンガからもいろんなことを学んだ、それに加えて俺の場合きっとそれ以上に居酒屋のカウンターで多くのことを学んだ。

いろんな人とサシで飲んでいるうちにいろんなことを聞けたんす。それがすげえおもしろくて。

でもそこで聞ける話はおもしろいもんばっかじゃなくオチもないこともあれば、とことんバッドエンドの救われない話。むしろそんな話ばっかりやったっすね。

ただそれが完全なリアルであることが私に刺さりまくったわけです。

酒が人間をダメにするんじゃない。人間はもともとダメだということを教えてくれるものだ。 立川談志

立川談志さんの酒のみを救う一言です。どう解釈するかも人によって違っていておもしろいっす。

ダメな面ってのは普段見えないもんで。そこが垣間見えるのは酒の席が多いっていう点では私は頷けます。

自分の弱さ・本音、失敗談は酒にあいます。言い換えれば、ただただ酒のせいにしてダメになれる機会なのかもしれません。

 

先日、諫早市で居酒屋さんやられている方と飲んでいたんす。『もっと飲む人が増えるとよかとにですねえ』つって。

私がブログ書きとしてできる長崎の居酒屋さんに貢献できるのはお店の紹介だけやろか?てふと思って。

紹介できるのは美味しいお酒や料理、居心地のいい空間。それだけじゃないよね。って発想になった時にいつかのネットに落ちてた言葉を思い出したんす。

 

『人生で大切なことは全てマンガから学んだ』

 

私はそれが居酒屋のカウンターだった。赤提灯の下で聞けるクセが強すぎる話もまた醍醐味じゃないかと思ったわけです。

恩返しといったらあまりに小さすぎるけど私の体験をみて居酒屋に足を運んでみよかなって人が増えればええな。

 

そんな想いをこめて『赤提灯の下の出来事』としてたまに筆をとってみたいと思います。

 

 

瓶ビールが嫌い

瓶ビールが嫌い。好かん。

それは味だとか見た目とかじゃなくて。それを取り巻く文化が好かんとです。

どこの社会でも日常的にあるやつでした。

 

大学を卒業し長崎から九州北部の会社に新卒で入社しました。そこの歓迎会が引き金でした。

下請け・協力会社やメーカーさん等、こちらが『お客様』でいられる人たちも参加していただき盛大に行われたんすよ。

社会人1年目を思い出して欲しい。

その会社のピラミッドの底辺・カーストの最下位。『歓迎される』のは建前で乾杯の後は酌をしてまわり、先輩上司からありがたいお言葉を頂きにいく。

 

素晴らしい行事だね(迫真)

 

さっき書いたけどこの酒の席には下請け・協力会社やメーカーさん(以下:協力会社さん)がいた。

普段、先輩方がとても仲良くしているはずの協力会社さんたちだ、

無茶振りされたり納期を極端に短縮されたり金額をたたかれたりドタバタなんかされてないよね?

 

されてるね。ずっと睨んでんね。ごめんね。

 

普段しいたげられている会社に新人がはいってきた。絶好のカモである。

『よろしくお願いします。ささ、酒をどうぞ。もひとつどうぞ。まま、そういわず。』

協力会社さんの『ようこそこの業界へ。今日は楽しんでください。』と『つぶすつぶすつぶす』が50%-50%くらいで迫ってくる。体感は2%-98%だ。

 

 

注ぐと注がれる無限ループ

ビールを注ぐと注ぎかえされる。注ぎ返される為には自分のコップは空けなければいけない。

その結果はどうだ。いつの間にかすごい量を飲んでいる。

ならば飲まなければいい。だがそれはダメみたいだ。

 

【全ての参加者たちの席を瓶ビールをもってまわりお酌をする】というミッションは

【人数分ビールを飲む】に置き換えられる。

ビールが好きな人は話している最中にも飲むので注ぎ足してやらねばならない。そしたらまた注がれる。

 

宴も中盤くらいにもなるともうフラフラだった。それでも注がねばならなかった。地獄だった。

楽しんで酒を飲んでる人らが心底羨ましくてたまらなかった。

 

どうするつもりおばちゃん

協力会社に20代の格好をされた非常におめかしに力をいれた50代のおばちゃんがいた。顔面偏差値3くらいだった。ビールを注いだ時『そんなに飲ませてどうするつもり』とほくそ笑みながら言われた。

俺に金と権力があったらって強く思った瞬間だった。耐えるしかなかなかった。

握りしめた拳から人差し指だけを伸ばし口元にあてて、どうするつもりおばちゃんをいなした。ご機嫌そうでなによりだった。

 

そしてリミットは訪れた。俺はトイレに篭り吐き続けた。

 

こんなはずじゃなかった。輝ける社会人一年目のお酒はもっと楽しいもののはずだった。

 

そんなに高級じゃないとこのダイニングバーとかで『ローリーズファーム』やら『アース ミュージック&エコロジー』の服を好む白い肌のゆるくふわふわした女の子とアハハウフフと飲んでいるはずだった。

あわよくば付き合って抱ければなおよしだ。

 

ところがどうだ。いま抱いているのは白い肌だが『TOTO』とかかれている。そして固い。

この極限状態で寝るのはまずいと思い、気がまぎれることばかり考えてしのいだ。

『いつも綺麗にご利用いただきありがとうございます』のフォントはこれ明朝?ゴシック?正楷書体?

この便器のタンク節水タンクやん。アース&エコロジーやん惜しかったやん俺。でも俺何回も流してるから意味ないっすねごめんね。

 

そんな時、携帯がなった。相手は上司だった。なんかめっちゃ怒ってた。内容はむちゃくちゃだったけど簡単にいうと『どこおっとや、はよ戻れや』だった。

限界の旨伝えたが無理だった。もういい。座敷をゲロまみれにしてやる。そして絶対この会社辞めてやる。

 

そう心に誓いトイレを出たら瓶ビールをもった『どうするつもりおばちゃん』がにっこり笑って立っていた。俺はトイレに戻り吐いた。

TOTOに抱かれながら、握りしめた拳から中指だけを伸ばし天を刺した。

これが俺の精一杯のパンクスだった。

 

再会

それからというものお酌したらお酌され返される文化に嫌悪感を抱いた。

酒をつがれてすっごく嬉しい人ってどれだけいるだろうか。あんまりいない気がする。

逆に酌されないと気を悪くする人。これは少ないながらどこにも一定層いる。この人らが偉いけんこの文化はなくならんとじゃなかろうか。

 

ビールはジョッキで。自分のペースで飲もうや。なんで気ば遣わんばいかんとや。それが一番平和じゃんすか。

 

俺は頑なだった。

歳月がたち、俺は仕事で長崎市にやってきた。『長崎にきたら一口餃子ば食ってみてください。うまかとですよ』

一緒に頑張ってくれた地場の会社の方から雲龍亭に連れてきてもらった。そこで俺は久しぶりに奴と対面することになる。

『瓶(ビール)ばもろてよかですか?キリンがよかですね?』

 

正直テンションが下がった。また相手のグラスの減りに常に注意を注ぎ注がれる2時間が始まる。もっと美味しく飲みたい…

そんなことを考えてビールを注いでいたらある提案をされました。

『おっとっと。ありがとうございました。乾杯。あとは手酌でいきましょうか。

 

びっくりした。こういう提案はじめてでした。

『猫町さんと雑談の中で『メシや酒』の話が聞いてておもしろくてですよ。きっとこがん場面では一般的なマナーや気遣いは無粋と感じたとですよ。どうでしょ。』

『ここで餃子ば食いながら瓶ビールば傾けて、全然頭に入ってこんテレビばぼんやり観るとですよ。よくなかですか。』

たまげたな。って思いました。

  • 手酌は出世しないだとか気を遣われていないとかマナーの押し売りだぜ。
  • ざっくばらんな2人で飲むのにそんなんいるかい。
  • 長崎の餃子ば楽しんでくれんですか。
  • でも一杯目は必ず注ぎます。それは『おつかれさまでした』の感謝の証なんです。

 

そんなことを聞いた気がする。

 

そう言ってくれた彼は今、出世して部長をしている。

 

今でも雲龍亭にいくと当時を思い出す。そしてジョッキでもいいんだけど瓶でビールを頼むんだ。ニラとじうめえ。

きっとそんな話を聞いたからだろうなって。少し笑う。

相手のニーズにあわせて対応してくれた彼にすごく救われた。こんな人が『気遣いができる人』と思うんです。つーか洞察力がすげえ。

 

今、私は瓶ビールが好きだ。

きっと彼のおかげだ。

注いだら注ぎ返す。ただそこに機械的な要素はない。

相手の酔いの状況や体調などをそれ以上にみるようにしてピッチを決めている。

彼がいった『おつかれさまでした』の感謝の証。瓶ビールを傾ける度に、心も傾けおじぎしている。

これはジョッキで体現できない瓶ビールの美しさなんだろうな。

 

今、私は瓶ビールが好きだ。

 

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